2018年7月28日土曜日

リングスリーブ圧着工具のミニタイプはダメなの?

結論


結論から言うと、ダメではない。

リングスリーブ圧着工具には、フルサイズの長いものと、短いミニタイプのものが売られている。第二種電気工事士の試験では、「リングスリーブ圧着工具のミニタイプは本当はダメで、フルサイズのものを使用した方が安心」という説と、「リングスリーブ圧着工具のミニタイプはOK」という説が居る。ネット上にも色々な情報がある。実際のところ、どうなのか。きっちり調べてみた。

もう少し具体的に


私自身も気になったので今年2018年上期の受検案内を詳しく読んで調べてみた。そこから読み取れる事はこういうものであった。
  • フルサイズでもミニサイズでも、JIS規格のものを使うこと。
  • いくらJIS規格といっても、あまりにも古いもの(1982年以前)はやめておく。
  • フルサイズを使うのは、違反ではない。
  • ミニタイプを使うのは、違反ではない。
  • フルサイズだと、対応できない問題が出題されるリスクはない。
  • ミニタイプだと、対応できない問題が出題されるリスクはある。
  • ミニタイプで対応できない問題が出題されるリスクは、メチャクチャ小さい。
ちょっと詳しく掘り下げてみたい。

ミニタイプの持ち込みはOKなのか

これはOKだ。

受験案内には、「持ち込む事が違反だ」という意味の条項は見当たらない。
逆に、「電動工具以外の全ての工具を使用することができます。」と書いてある。
ミニタイプの圧着工具は、電動工具以外の工具だ。なので持ち込んでOKだ。

ミニタイプを使用するのはOKなのか

これはOKだ。

受験案内には、「ミニタイプを使用する事が違反だ」という意味の条項は見当たらない。

関係ありそうな条項には、こんなのがある。
「リングスリーブの圧着は、リングスリーブにJIS C 9711に適合する圧着マークが刻印されることが求められます。リングスリーブ用圧着工具は、JISの「屋内配線用電線接続工具・手動片手式工具・リングスリーブ用」(JIS C 9711:1982・1990・1997)の規格のもの(握り部分の色が黄色のもの)を使用すれば、この圧着マークが刻印されます。○、小、中、大の刻印が明確にでるものを用意してください。なお、上記以外のリングスリーブ用圧着工具(1982年より以前のJIS規格のリングスリーブ用圧着工具を含む。)で圧着し、リングスリーブに圧着マークが刻印されない場合は欠陥の対象となります。」


 言えることは、JIS C97411に適合した圧着マークが刻印されれば、OKという事だ。ミニサイズとかフルサイズとかは関係なく、規格に適合していればOKなのだ。

ミニタイプのリスクとは?

ものすごく小さいが、ゼロではない。そしてリスクを取るか取らないかは自己責任だ。

ミニタイプのものは、持ち込んでも、使っても、違反ではない。それなのに巷では、ミニタイプの何が引っかかっているのか。それは、ミニタイプのものでは、「大」の刻印をする機能がない(「大」のサイズをカシメる機能がない)という点だ。

ただ、これについては、ほぼリスクをヘッジできる。電気技術者試験センターが試験にさきがけて発行している「技能試験の概要と注意すべきポイント」を読むと、そこには、「イ.リングスリーブの選択を誤ったもの(JIS C 2806 準拠)」が欠陥に該当する、と書いてある。

 なので、公表された試験問題を事前にチェックして、「C2806に従ったときに、大サイズのリングスリーブを使用する箇所が一箇所も無い」という事が確認できれば、ミニサイズのものだけ持っていけば概ね十分な準備と言えよう。

ただし、事前に公表された問題とは違うものが本番で出題されるという可能性は完全にゼロだとは言い切れない。「公表した問題と違う問題は絶対に出しません」みたいな保証はされていないのだ。なので大サイズのリングスリーブの必須箇所が含まれるという可能性もゼロではない。

とは言っても、 電気技術者試験センターだって、そんな事をしてしまったら大揉めに揉めるだろうから、わざわざそんな思いきった事をするとはまず考えにくい。可能性を数値化すれば、天文学的に小さい数値になるだろう。ただ、あえて言えばそのリスクはゼロでないので、そこは自己責任だ。

電気技術者試験センターも、ミニタイプのものを使っていいかどうかで迷っている人がけっこう居る事には気づいていると思う。なのでひとこと、「 ミニタイプのものを持ち込んでもいいですよ」と言ってくれたら親切な気はしなくもない。

ただ、もしそれを言ってしまうと、将来的に、出題内容を変更して、大サイズのリングスリーブを含む箇所を設ける、という事が絶望的なまでにやりづらくなってしまうだろう。

結局、ミニタイプを使っていても、リスクがゼロに限りなく近いであろうが、ゼロリスクそのものにはできないのだ。こういう事に慣れていない人は違和感があるだろうが、役所や社団法人が関わっているものには、ありがちな事だ。どうしてもゼロリスクにしたい人は、現状ならば、ミニタイプでない大きいものを使うしかない。


JIS規格品で「大」サイズも圧着可能なモデル。私自身もなんだかんだでこれを使った。因みに、グリップのカーブがうまく工夫されていて、長いグリップが大きく開くにも関わらず、握り締める力を調整しながらかしめやすい。
ロブテックス 圧着工具(リングスリーブ用) AK17A



コンパクトで持ち運びに便利なミニタイプ。「大」サイズはかしめられないが、ちゃんと「「JIS C 9711:1982・1990・1997」に適合している。
ロブテックス リングスリーブ(E)用ミニ圧着工具AK17MA2