「VVRストリッパー」は存在しない
第二種電気工事士試験に毎年ではないが、時々登場するのがVVRケーブルだ。VVFと違って、このVVRケーブルを加工する専用の工具として製品化されたものは、今のところ市場に出回っていない。「VVFストリッパー」という製品が何種類もあるのに対して「VVRストリッパー」はという製品は無いのだ。今日ではそもそもVVRケーブルという材料が試験以外の場所で使われる機会がほとんどないので、無理も無い。
VVRケーブルはどうやって加工する?
VVRケーブルはVVFケーブルとは断面の形状や寸法が異なっている。なのでVVRケーブルのシースを剥くのにVVFケーブル用のワイヤーストリッパーをそのまま流用したとしてもうまくは加工できない。ただし芯線の被覆はVVFケーブルやIV線と共通の工具で加工できるので、そこは心配要らない。課題は、中にある心線もその被覆も傷付けずに、どうやって手早くシースを剥ぎ取るか、という事だ。
専用の工具が無い中、VVRケーブルのシースを剥ぎ取る作業を、受験者は様々な方法で行っている。比較的やっている人が多そうな例を挙げていくと、次のものがある。
- 電工ナイフを使う
- カッターナイフを使う(ただし持込の自粛を求められている)
- ペンチの刃で手加減しながらシースだけ切る
- VVFケーブル用のストリッパーの切断部分で手加減しながらシースだけ切る
このページを読んでいる人にも、これらのうちのどれかの方法で対処している人が多いのではないかと思う。
VVRケーブルの加工にはコツが必要?
第二種電気工事士試験向けの各種の教則本を見ると、ペンチや電工ナイフを使う作業方法が書かれている場合が多い。しかし書かれている内容は皆同じではなく、読む本によって様々な異なる方法が紹介されている。ただそれらの方法はいずれも、コツの要らない簡単な作業方法ではなく、反対に作業者に対してある程度の器用さやテクニックを要求するものだ。
VVRケーブルは毎回必ず登場するものではないし、たまたま使用する課題が出題されたとしても、使用する箇所は少ない。なので、手先の器用さに自信のある人ならば、お金を掛けてまでVVRケーブルを加工するための工具をわざわざ用意しなくても、教則本に書いてあるようにペンチや電工ナイフを上手く使いこなす方法で、それほど苦労する事なく自分の器用さを活かして乗り切る事ができてしまうかも知れない。
市販の教則本の立場では、テクニックはある程度必要だと割り切って、切り捨てているような雰囲気がある。
しかし、不器用なので手加減のコントロールでは上手な加工ができる自信がないとか、コツなどに頼らずにいつも安定した仕上がりになるような作業をしたいと考えている人も居ると思う。あるいは、試験の本番は、多かれ少なかれ緊張するので、そこでうっかり手元が狂ってしまうのが心配だ、という人も居るのではないだろうか。そこをなんとか、という事で、市販の教則本には載っていない方法を模索してみたい。
コツに頼らないケーブルストリッパーという選択肢
そんな、VVRケーブルの加工に悩める受験者にお薦めするひとつの方法が、「ケーブルストリッパー」という工具を使った方法だ。この工具はVVRケーブルの加工専用の工具ではないながらも、比較的コツが要らずに、VVRケーブルの被覆の剥ぎ取りに使える工具としておすすめできる。
ケーブルストリッパーは、シンプルな仕組みの、刃物の工具だ。あらかじめ刃の出幅を調整しておいてから、被覆を剥ぎ取りたいケーブルやコードをガイドに通して位置を安定させる。安定したらケーブルの周りをぐるりと一周させると、被覆を剥ぎ取るための切り込みが一定の深さで一周、均一的な深さに入る、というものだ。深く切り込み過ぎないように予め調整ができるので、芯線やその被覆を切りつけてしまうという失敗の防止に役立つ。単純な仕組みなので故障しにくく、刃が突出していないので安全性が高く、工具にとって大事でなおかつデリケートな刃が欠けにくい。
メーカーによって細かい違いはあるが、図で示すと概ねこの様な仕組みだ。
これを使うとだいぶコツが要らずに加工できるようになる。VVRケーブルに苦手意識を持っている受験者は、だいぶ悩みが軽減されるのではないだろうか。
ほとんどの製品は刃の出の長さの調節を無段階にできるので、使えるケーブルはVVRに限らない。断面が円形のケーブルならば、多くのケーブルに使い回せる。例えばキャブタイヤケーブルなどにも使える。どれくらいの太さのケーブルに対応できるかというのは、製品によって異なる。第二種電気工事士試験で使うならば、8mm~28mmか、あるいは4mm~16mmの径のケーブルに対応した製品がちょうど良いだろう。
ケーブルストリッパーの製品カタログ
試験以外でも、現場で安定した加工をしたい場合などにも役に立ってくれる。軽くてかさばらないので、工具入れに1個入れっぱなしにしておいても邪魔にはならないだろう。下に、製品の違いを比較できる様にコメント付きでカタログを載せておいた。グット(太洋電機産業) YS-100

ハンダ付け用工具でお馴染みのgoot(太洋電機産業)。なぜか他社よりも低価格。どんなものかちょっと試してみたい人にも。
ロブテックス(エビ) ケーブルストリッパー CS28

ロブテックス(エビ) ケーブルストリッパー CS28

全体的にがっしりしていて、大きな滑り止めグリップの付いたタフな造り。電気関連では他の工具とカブりにくい緑色のカラーリングは、工具入れの中で見つけやすい。
マーベル(MARVEL) ケーブルストリッパー MC-012
マーベル(MARVEL) ケーブルストリッパー MC-012
ベッセル(VESSEL) ケーブルストリッパー ケーブルの被覆剥離用 3700KS
ベッセル(VESSEL) ケーブルストリッパー 3700KS

やや低価格ながら、手にフィットするデザインに、親指を沿えるパット付き。他メーカーをよく観察して、出来のよい後発製品を生み出した感がある。