ぱっと見から、唯一無二というか、他のメーカーの類似品が見当たらない、個性的な形だ。
全長170mmとコンパクトなサイズで、ケーブルの切断機能は無く、被覆の剥ぎ取り専用だ。シースを剥くための刃が一直線なのが個性的だ。シースは刃で切るという発想ではなく、切断線の大部分に切り込みを入れたら、残りの僅かにつながっている部分は引っ張ってちぎるという発想だ。ただむやみにその作業を行おうとすればかなり力任せな加工だ。しかしそうはならない。先にシースに縦裂きをするのだ。先に縦裂きをしてから横向きの切込みを入れ、引き剥がすという手順がメーカーの推奨する手順だ。その縦裂きが丁度良い深さで安定して行えるように、縦裂き専用の刃とガイドが付いている。
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メーカーサイトより |
試験で人気のホーザンやMCC製のストリッパーで3芯の線の剥ぎ取りをする場合、2芯の線よりも力が必要になる。この製品では2本3本とまとまった線を1本ずつにほぐす事で、軽い力で簡単に引きちぎりながら剥ぎ取るという加工方法なのだ。
この加工方法は、実は現場ではよく行われている。試験の時は、それほど長くシースを剥ぎ取る作業は無いのだが、現場で長くシースを剥ぎ取る時は、芯線の中間を狙ってシースを縦に裂くという作業を多くの人が行っていると思う。こういう作業に慣れている人には、親しみやすい原理だと思う。
また、刃が一直線なのは、ケーブル断面の形にあわせた円弧状の刃よりも、研ぎやすくて切れ味が安定していそうにも見える。また、力加減を調節すれば、VVFケーブルに限らず、他の種類の電線の加工にも汎用性がありそうだ。1本で色々使い回しが効くとなると、全長170mmというコンパクトな外観と相まって、現場で持ち歩く工具を減らすのには好都合だ。
造りの精密さや刃の切れ味も素晴らしい。北米を中心に海外でもその名を知られるおよそ100年続く燕三条の老舗によるマルト長谷川工業所の製品であるだけに、信頼性も十分だ。
市販の実技試験対策の教科書には載っていない加工にチャレンジする事にはなるが、既に現場で色々な加工作業を経験している人や、試験の合格後、現場での使いやすさを見据えた人には、良き相棒になるかもしれない。